また…
 やはり。
 また、触れてくる。

 そこにどんな想いが込められているか、わからぬほど鈍感な俺ではない。目線や態度では示さないくせに。こうして、肌が触れるほど近くに眠ったときにだけ、俺を宝物扱いする。

 はじめは、その温かさで目覚めた。
 気がついたときには、長い腕の中に閉じこめられ、うっすらあけた瞳に飛び込んできたのは綺麗な象牙細工の肌。状況がわからなくて飛び起きる前に、相手がついと背を向けた。きっと、俺が目覚めたことに気づいたから。

 偶然を装った、その不自然な寄り添いは、何度も続けられている。その割には、何の進展も見せなかった。
 意外と臆病なこの親友殿は、いったいどんな表情で自分に触れているのだろうか。自分の知っているものだろうか、それともまだ見ぬ顔なのかもしれない。

 首の下に回された腕は、定位置のように肩先を抱く。その冷たい指は止まることなくその肌を撫でる。穏やかで優しくて、涙が出そうになるような、笑いたくなるような、そんな手だ。ときおり産毛を逆立てるような、いたずらもする。
 くすぐったくて暴れたい。触るなと怒っても良いのかもしれない。けれど、この時間をぶち壊したいわけではない。

 俺は、いったい何を待っているのだろうか。

「う…ん…」

 自分ではわざとらしい深呼吸をして寝返りを打つ。体を固くした彼は、それでも俺の下から腕を抜かない。俺が静かに落ち着くと、胸を背中にピタリとあてて腹に大きな手を当てる。労るような手つきに、また笑いたくなった。

 今日は、その手が俺の目の前にあって、月明かりの中に産毛も見える。美しいとしか言いようのない肌は、見事に月をも反射する。
 思わず、というよりは、ずっと押さえていた行動を、衝動的に取ってみる。その前腕に、俺は噛み付いた。
 背中から、大きな動揺が伝わってくる。俺はまた、笑うのだ。

 さあ、どうする? オスカー・フォン・ロイエンタール。

 お前がほしいものと、俺が待っているものは、もしかして似たようなものかもしれない。 
 そろそろ、互いを見せ合うときではないだろうか。

 

 

 

2003.8.28up キリコ
よくわからん話ですな。
毎年、夏になるとミッちゃん攻め?
というような話を書きたくなります。
なんでかなー?(笑)