16歳以上のお嬢さんですよね?(笑)







クリスマスの夜

 

『クリスマスは恋人と過ごす』
 そんなもんに憧れているらしい桜木は、その相手に俺、を選んだらしい。イブに泊まりに来い、というのはそういう意味だったのか、と今更ながら納得する。こういうイベント好きな奴なら、誕生日やバレンタインもしようとするのかもしれない。俺は、どっちかってーと、そういうのには疎い方だ。
 それにしても、俺と桜木は、いつから「恋人」になったのだろうか。

「好きだ」
 しつこいくらいに言う。まるでバーゲンセールのようで、かえって有り難みも真実みも減っていく。
「知ってる」「うるせー」「しつけー」
 俺が返した言葉はこんなもんだ。そして、桜木は怒る。
「せめて「俺も」くらい言えよ!」
 顔が真っ赤なのが暗い中でもわかるくらい余裕もないくせに、エラそうに言う。もっとも、俺にもそれ以上反論する余裕は残ってなかった。

 こないだ初めて名前を呼んだばかりなのだ。これ以上、新しい言葉は口に出来なかった。心の中ではっきり「好きだ」と認めることは出来たかもしれないが。たぶん、きっと、そのせいだ。どこに触れられても、その部分が異常にアツク感じる。いつもより敏感、といえばそうかもしれないが、体だけの快感は、気持ちが伴うと怖ろしいものになることを、俺は知ることになる。

 分厚くて熱い唇は、意外と柔らかくて、言葉を紡ぐときよりも、ずっと優しい。触れるだけの口付けに、俺はウットリと目を閉じる。悔しいがコイツは駆け引きを覚えてきていて、時々意地悪をしやがる。「焦らす」ことを知ってしまったらしい。外されるとムッときて青筋を浮かべると、今度はあやすように一層優しく口付ける。そんなキスが結構好きだ。それが突然、
「目を開けろ、ルカワ」
 キスの合間に何度も言う。目を閉じている方が、コイツの温かさとか、はっきりわかって好きなのに、と渋る。あまりにもしつこく言うので、仕方なく少し開く。至近距離で桜木の目と出会う。コイツは開けっ放しでヤッているのか、と初めて気付く。目と目を合わせたまま、チュッと音を立てた。
「おめーにキスしてんの、俺だぞ?」
 何を当たり前のことを、と呆れる。確認しなければならないことなのだろうか。俺がキスする相手は、桜木しかいないのに。今のところ。
「…どあほう…」
 まだ、そう言える余裕があった。このときまでは。

 何もない胸を揉み、小さな突起を吸い上げる。男相手に何しやがる、と思うけれど、間違いなく性感帯のようだ。俺は、これに弱い。脇腹からスーッと撫で上げられると、残念ながら声を抑えきれない。
「…ん…ふっ…」
 仰け反って、手を口にやる。その仕草が自分で気に入らないのに、必ずやってしまう。
 膝を抱え上げて、オレを口に含む。時々下を向いて、真っ赤な髪を確かめる。桜木以外に、そんなことをしようとする奴はいない。そんなところ、触れられたこともない。てめー自分がどこに指を突っ込んでんのかわかってんのか、と俺の方が確かめたい。けれど、口には出来ない。
 クチュっという粘着音に耳を塞ぐと、わざと音を立てやがる。指がからかうように、俺の中を蠢く。俺は、もう文句も言えない状況に陥るのだ。
 ゆっくりと、いつもゆっくりと俺の中に進んでくる。全部入ると大人しくなる。同時に俺も息を吐き出す。この辺のやり取りは、だいぶあうんの呼吸になってきていて、すっかりお互いの体に慣れてきたことがわかる。痛くないわけではないけれど、俺は萎えなくなったのだ。
「…動くぞ」
 必ずそう宣言してから、そして最初は小さな蠕動からはじめる。ガマンがきかなくなると激しい動きになってしまい、俺の呻き声で我に返るらしい。
 俺の両足を肩にかかげ、上から見下ろしてくる。背中に入れた枕がずれて、俺は身をよじった。
「うぅん…」
 ちょうど、イイところに当たる。桜木は、嬉しそうにソコを狙う。俺があげてしまう声に、素直に従う。
「なぁ…目を開けてみろ」
 またそんなことを言う。動きを止めて、覆い被さるのを止める。上半身を起こした桜木の胸に、窓からの小さな灯りが差し込んで、筋肉に影をつくる。そんなところが見えた。その上に、真っ赤な髪をした桜木の顔が見える。目線を降ろすと、オレを掴んだままの桜木の大きな手があった。一通り見回した後、最後にまた桜木と目を合わせた。
「…俺だぞ? 桜木花道だぞ?」
 そう言って、俺の膝に口付ける。
 てめーこそわかってんのか? てめーが今、口を当てているスネ毛もある長い足は、俺のなんだぞ? キツネ呼ばわりする俺だぞどあほう…

 目と目を合わせたまま、桜木の静かな動きに合わせるように呼吸する。
「好きって言えよ…」
 荒い呼吸の中で懇願するように言う。俺はプイと顔を反らせる。
 俺を抱いてるのが桜木だ、と前からわかっていた。けれど、「俺が好きかもしれない桜木花道」と認識しながら抱かれた、という意味は思ったより大きく、俺は初めて桜木を自身に感じたまま、イクことが出来た。声を抑えることも出来ず、勝手に流れてきたらしい涙も止められず、桜木にしがみついて、イッた。

 


2000.12.17 キリコ

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挿し絵…? (滅多にこんな感じは描かないんですよ/笑)