ストーブ
ふとんに入り、眠ってしまう寸前まで灯したままの石油ストーブ。
部屋を真っ暗にしても、その煌々とした明かりは、暖かさ以外ももたらしてくれる。寒さで丸くなって眠るルカワを叩き起こし、黙ったまま気持ちを直接伝える。
一度は言葉にしたけれど、そう言ってしまうとまた違っている気がして、また言えない。
とてもシンプルで、たった2文字のその言葉に、俺は振り回されている。
ルカワは、不機嫌そうな表情で、鋭い睨みをきかせながら、ゆっくりと両腕を俺の首に回してくる。冷えないように、早く熱を持ってほしくて、俺はせわしなく動く。
互いをふとんで覆って、まるで誰にも見せてはいけない行為のように、閉じこもって抱きしめ合う。
狭い空間で、俺達は一つになる。俺は、その滅多に見られない顔にも、きっと誰も聞いたことのない声にも、しがみつく男の手にも、うっとりする。
掛け布団を蹴飛ばすと、ストーブの赤い光が俺達の体を照らす。
そちら側の肌が、より一層色づいて、反対側の筋肉に陰影をつける。
俺がコイツの顔の横に手を置くと、ちくしょうと言いたくなるような顔は影になる。
その顔をストーブの方向に向けると、色っぺー顔がはっきり浮き出る。
冬のSEXが、俺は気に入っている。何もしない夜でも、「さみー」と呟きながら、人の布団に入ってくるコイツがいい。冷たい足を絡ませてくるのは、無意識なのだろうか。
他人と眠るのが、こんなにも温かくて心地よくて、たとえ相手がルカワでも、こんなにも穏やかな気持ちになるとは知らなかった。
いや。
もしかしたら、相手がルカワだから、かもしれない。息も白くなるような朝、俺はさっさと布団から出ることにしている。そうしないと、いつまでも離れられないと思うから。
俺が起きた気配で目覚めたコイツは、ストーブをつけた俺の背中を引っ張る。
「さみー」
部屋が暖まるまで一緒に寝ようという意味だろうか、俺のパジャマの裾を何度も引っ張るコイツの顔は、まだ寝ぼけている。
こういうとき、いつもよりちょっとだけ素直なのを、おそらく本人すら知らないだろう。
俺にだけ、見せる顔。
俺の腕枕に弛緩した頬を乗せ、また眠ろうとするコイツ。
俺の目から見ても、結構幸せそうだ。暖かい家ではなく、不自由だらけの俺のトコに来るルカワに、俺は参っている。
一度も「スキ」と言わないコイツの、行動の告白だと勝手に思っているのだ。
2001.1.10 キリコ
(2001.3.14up)アップするのを忘れていたというか…(笑)
ちゃんと日付まで入れてたのにねぇ…(今頃ファイル発見)