ルカワの部屋 

 

 これまで何度かシたけれど、全部同じ体位(いわゆる正常位だろう)で、同じくらいの時間で、回数は時によって違っているくらいだった。どうも、他の体位がコワイというか、ムツカシイ気がしたから。技術的にも、そして相手の機嫌も。
 なんとなく、俺の部屋でだけスること、そんな風に思っていた。それ以外ではキスをしたくらいだった。
 ルカワの部屋は、ルカワのテリトリーで、ルカワの匂いしかしない、バスケットワールドだったから。なんとなく、バスケットに関すること以外に触れてはいけない気がした。隣で眠っていても、我慢していた。
 俺って、結構臆病かもしれない。

 座って向かい合うと、ツラかったらしく、俺の両肩をギュッと掴んで、自分の膝で立ち上がった。楽になるのならば、と腰を支えようとしたが、いきなり胸を強く押され、俺がシーツに頭をつけていた。
 膝立ちのままのルカワは、呼吸を整えているらしく、しばらくそのままでいた。
「…ダイジョブか…?」
 慣れない体位が苦しいんじゃ、と心配した俺に、
「黙ってろ」
 という、つれない返事を寄こしやがる。
 妙に、最初から積極的なコイツに、任せることにした。

 キュッと締め付けられ、「ウッ」と声が漏れる。俺は、あまり声を抑えようとはしないが、それでも一方的にヤられている今、なんとなく歯を食いしばってしまう。こういうのに勝ち負けはないのだろうが、なんとなく意地を張って、負けず嫌いが先に立つ。いつも声を出すまいとしているコイツも、同じように思っているのだろうか。
 俺の胸あたりに腕を突っ張ったまま乗せ、自分なりに動いているルカワは、滅多に聞けない素直な声をあげていた。逃げ道があるからか。自由だからだろうか。
 夢中になってんだろうと感じるとき、コイツはやけに積極的になる。
 たぶん、気付いてないだろう。
 実は、それがかなり嬉しいかもしれない。
 「あの」ルカワが、この俺相手に気持ち良くなっていて。
 「あの」ルカワが、この俺にだけ見せる顔があって。
 洋平や、知らない奴にまで、自慢したいくらい、嬉しかったりする。あ、一人だけ、絶対にバレてはいけないと思う人もいるけれど。

 ルカワの中、というのは、アツイ。コイツ以外の人としたことないので比べようはないが、冷たいイメージのあるコイツで、寒がりなのに、体の中はいつもアツイ。
 そんな謎な体に、俺はゾッコンかもしれない。
 支えている腰から、引き締まった尻にかけて、撫でたりつかんだり、体のラインを探れるのが楽しかった。
 俯いて揺れる髪の毛の、かすかな音が聞こえる。一緒に飛んでくる汗すらも、新鮮だった。
 形のいい頭を引っ張って、思わず、サラサラで少しベタついた、でも綺麗な髪に口づける。
 その動きが一つの刺激となったのか、一気に血液がソコに集まるような、そんな声をルカワが出した。
 俺はブチ切れ、ベッドの音も忘れ、慣れた体位で無我夢中になった。

 いきなりのし掛かって、服を脱がされたときは焦ったが、たまにはこういうのもイイなぁと思ってしまう。俺がシてやるのが楽しいが、コイツもヤリてーんだなぁって、はっきりわかっていい。
 何も言わずに、いつも俺がシていて、拒まないコイツもイイが、求め合ってんだーなんてわかると、いつもよりノッてしまう。いつもより、アツクなってしまった。
 俺のために、ここに残ってくれたんだなァと思うと、感激の言葉も出なかった。
 嬉しいのに、嬉しいと言えない自分がもどかしかった。

 俺達は、久しぶりに疲れ果て、汗ばんだ体を重ね合わせたまま、眠りに落ちた。

 こんな新年は初めてで、あれって「姫はじめ」ってヤツかなーとだいぶ経ってから気づいた。

 

2001.1.16 キリコ
 
 

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