夏と氷の相関関係  

 

 首筋に熱くて柔らかいものが触れて、流川は大きく首を仰け反らせた。薄い皮膚をつばまれ、引っ張られる。離れていったあと、そこは赤くなってしまう。それを取り除くかのように口に挟まれた氷でそこをなぞると、仰け反らせたあごが胸をめがけて戻ってくる。さっきから場所を変えても、同じことを繰り返していた。
 花道の熱い口の中で、せっかくの氷はすぐに溶けてしまう。少しでも冷やそうと手早くあちこちに口付けた。その度に、流川の体は前後にゆれる。素直な反応に、花道は気を良くした。


 きっかけは、流川の何気ない一言だった。
 こんな関係になって何年も経つのに、未だにウブなままの花道も、元々無口な流川も、どちらもいつも困っていた。たいていは我慢し切れなくなった花道が無言のまま押し倒すように始まるSEX。流川はムスッとしたまま、けれど拒否することは滅多になかった。
 ところが、珍しく流川がノーサインを出した。
 グイと押し返され、花道は驚いた。
「……イヤ…なのか?」
 恐る恐る尋ねる。花道が流川にこれだけ真摯な表情を向けるのは、二人の初体験以来だったろう。そんな花道の表情に、流川はチラと横目を向け、ため息をついた。
「…イヤ…じゃねーけど」
 その遠慮がちな言葉と裏腹に、流川は近づく花道を押しのける。花道の頭の中はハテナマークでいっぱいだった。
「…あちー」
 そしてそれが拒否の理由だと知った花道は、ガクリと肩を落としたのだった。

 花道のアパートにはクーラーはなかった。流川が入っている寮とはかなり違っていた。その上、夜の営みが外に漏れないように、そのときは窓を締め切る。そして二人の興奮が熱気となって部屋に充満する。狭い1Kアパートは蒸し風呂状態になるのだった。
 しかし、実はこれは今に始まったことではないのだが、そんなところまで考えの及ぶ花道ではなかった。


 流川は、熱い自身が氷入りの口に含まれる感触にかなり驚いた。部分的に冷たくなり、萎えそうなのにキモチイイ方が上回る。その2つの刺激にいつも以上に腰を揺らしてしまっていた。
 そしてそれは花道にも目に見える反応で、必死になるあまりソコにだけ氷をいくつも消費した。けれど、あまりの淫らさに、花道自身も長くもたなかった。
「ルカワ…いくぞ…」
 SEXの間で花道がしゃべるたった一言を聞いて、流川もいつも通り構える。これだけは、何度してもツライことだった。
 少しでも密着する皮膚が少なくてすむように、花道は体を起こした。そうするとこれまでと違って、繋がった部分がよく見える。照れ屋な花道は直視できず、けれど十分に煽られていつも以上にノッた。一方、シーツ以外つかむものがない流川も、その不安定さに翻弄されていた。自分の足のあげられた高さにも眩暈がしそうだった。
 結局、無我夢中になった二人は、最終的には熱さも忘れて、きつく抱きしめ合ってほぼ同時にイッた。

 呼吸が整わないまま、けれど意識がはっきりしてきた流川は、自分の手の先がベッタリしたものに触れて、慌ててそこから離した。花道の背中に回していた自分の手が、花道の汗に触れていたことにようやく気がついたのだ。手のひらをシーツにこすりつけながら、乗っかったままの花道に「どけ」と態度で示そうとした。
 花道は、氷のかけらが浮いた水を手のひらに掬い、自分と流川の腹の間に塗りつけた。それほど冷たい水ではなかったが、熱い二人の体ですぐに沸騰しそうだった。
「…つめてー…」
「つめてーよな」
 流川の表情は変わらなかったが、花道には多少楽しんだらしい様子がわかった。シーツは、汗と水を含み、そのまましぼれそうだった。
「……これならいいか?」
 暑い中での熱いSEXがイヤだといった流川のために、花道なりに考えたことだった。プイと首をあちらに向けるしかしない流川に、花道は殴りかかる。素っ裸のまま、蒸し風呂でケンカになった。けれど、何も言わないのはO.Kに違いない、と付き合いの長い花道は勝手に解釈した。

 翌日、花道は腹を下した。それでも、冷凍庫の製氷機は夏の間フル活動だった。
 

 

2001.6.22 キリコ

 

そりゃあ「有意な正の相関」だべ…(笑) 

マンネリズムに一提言?(ウソです/笑)
いやぁ…突然思いついて(オモイツクナ!)書いてみまいた。
日頃ルカワ一人称で書くことが多い私ですが、
その場合、表現
(Hシーンの)に困るわけですよ…(笑)
このような話は三人称に限りまするなァ…(苦笑)

それにしても、どうやってこんな関係になったのか…
どっから「寮」とか出てきたんだか… ついでにこの人達いくつ?
自分でもわからん設定だと、ちと書きにくかったです…(笑)