セル

 

 俺の細胞と、桜木の細胞は、チガウ。
 ヒトの細胞は、60兆個あるんだっけ。生物で習ったはず。
 これって、誰が数えたんだ?
 確認できないけれど、俺は60兆個の細胞で出来ているらしい。
 こうして俺に触れてくる桜木も、60兆個の細胞で成り立っている。
 一つ細胞を取ったなら、59兆…後は99999…
 同じ数らしいのに、何がチガウのか。
 ヒトには同じ指紋はない。
 もしかして、細胞にも種類があるのだろうか。
 確かに桜木と俺とでは、何もかもが正反対って感じ。
 桜木の細胞は、赤っぽい。
 俺のは、どんなだろう?
「集中しろよ」
 キツイ目で睨んでくる。その目も細胞で出来ている。
 こんな、トイレという個室であるはずの暗い密室。
 なんで巨体の二人が、いそいそと入り込んでんだか。
 ムカついたから、桜木の指を自分の唇に当ててみる。
 あいた手で、自分の唇に触れてみる。
 やっぱり、自分のは、自家製だから、拒絶反応は起こさない。
 桜木の細胞はチガウものなのに、拒絶しない。むしろ、逆。
 ツイと撫でられると、鼻から息が漏れる。
 唇でさえそうなのだから、あっちはもっと大変。でも負けたくない。
 髪も目も、乳首やへそや欲望まで、小さな違いしか存在しない。
 少々色や発する匂いが違っていても、どこから見ても人間だ。
 けれど、桜木は俺とはチガウ細胞を持っているから、やっかいだ。
 他の人に触れてみても、何とも思わないのに。
 誰もがチガウ細胞を持っているのに。
 桜木の細胞には、何かエッセンスが入っているのだろうか。
 それは、ただの細胞のチガイ。
 そこに、「想い」なんてあるはずがない。

 

 

何が言いたかったんだかなー
細胞は60兆個よねー、から思いついた話? 呟き?
「セル」と聞いてまず思い浮かべるのは、ドラゴンボールのセル。
その声は、なんとロイエンタールだったり!!!(笑)

2002.9.12 キリコ