Fox&Monkey
花道は、流川のガクランを脱がさず、ゆっくりとシャツのボタンを外していった。向かい合って座る流川もされるがままではなく、同じように仕返した。ただし、花道のガクランの下はTシャツなので、ベルトを外すことしかできなかった。
年齢やら立場やら、花道は拘るところがある。自分にそういう部分があると、知ったのだ。
この、ガクランを着た高校生の流川は、今日が最後だから。
花道は、そのまま抱きたかった。行為の間、流川も意識的に目を閉じないようにしていた。花道ほどでは考えたわけではないが、ガクランを着たままのこの男を記憶しておこうと思った。
制服のズボンを片足だけ抜き、花道はゆっくりと流川に自身を進める。見下ろすと、乱れたガクランやシャツが、いつもより自分を煽った気がした。
慣れた行為に、花道も流川も快感の波が押し寄せる。そうなると、お互いに目を開ける余裕もなくなってくる。けれど、花道はふと思いついて、動きを止めた。自分に顎を見せて荒い呼吸を繰り返す流川の瞼はきつく閉じられていて、詰め襟が邪魔そうだとか、黒い髪に黒いガクランがいつもと違った雰囲気になるとか、いろいろなことを考えた結果、花道は先ほどのカメラを取り出したのだ。
カチッという音に、流川はうっすらと目を開ける。視線を向けると、すぐにレンズが視界に入った。
「…なにしてやがる…」
「…記念撮影」
「……どあほう…」
どうせ現像できないのなら、と花道は思うのだ。
このカメラの中には、卒業を迎えた自分たちが思い出として残るのだ。
そして、思い出だけでなく、喘ぐ流川の姿をカメラに収めたいと思ったのも事実だった。
何枚か、律動を加えながら、カメラを構える。実際には、かなりの手ぶれで現像できたとしても、まともに写っていなかっただろう。けれど、花道は夢中になった。
2人が果てたあと、花道は流川の胸に張り付いたまま呼吸を整えていたとき、流川はようやくやり返すことができた。自分の素肌に頬をくっつける男の顔を、横から撮した。
「…なさけねー顔」
「なんだと!」
そうして、いつもと違う空気だった卒業式が終わり、いつもの彼らに戻っていった。彼らはカメラに慣れていなかった。
室内ではフラッシュが必要ということに気付くのは、かなり先の話だった。
この話は「拍手」に置いてた話です。
最終話直後の2人…(笑)2008. 7. 25 キリコ
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