ゆるやかな頭突き  

 

 桜木と付き合うようになって1ヶ月。
 これまでは、これまでと、変わらなかった。
 ほんの少し、二人で話す時間が増えたくらい。

 いつからか、桜木と頭を寄せ合うようになった。
 それ以来、暗い公園で分かれる前に、痛くない頭突きが習慣となっていた。
 たぶん、最初が間違ったから、どうしようもないらしい。
 俺だって、どうすりゃいいのかわからない。
 

 首をのけぞらせ、勢いよくこちらに向かう頭。その間、コンマ0.5秒。
 構えてしまったのは、しかたないと思う。ケンカの方がアタリマエだったのだから。

 いつまで経っても煮えきれない頭突きに、俺はため息をつく。
 そうすると、桜木は背中をビクリとさせる。
 困っているのは、お互いさまらしい。

 

 今日も今日とて、ゆるやかな頭突きがやってくる。
 それがコイツの望みだったのか、と思うくらい、いつもおでこから向かってくる。
 仕方がないので、こちらもおでこを差し出す。

 けれど、離れていくその瞬間に、いつもと違う動きをしてみる。
 こんなキョリで、目を合わせるのは、これが初めて。
 暗闇でもわかる赤い顔の桜木は、ちょっと驚いた後、目線を泳がせた。

「イヤなんていってねー」
「……ルカワ?」

 遠慮する必要はない。本当にイヤなことならぶっ飛ばすけど。

 

 

 たぶん、ものすごい時間をかけて。
 俺がそう感じただけなのかもしれないけど。
 やっと目当てらしいところとぶつかる。
 付き合い始めて2ヶ月目。そろそろマフラーがほしい季節。

 そんな関係ないことを一生懸命考えた。
 離れ方がわからなくて、ただじっと唇をぶつけ合った。

 

 

オクテな二人が好きですわー(笑)
初チューの妄想は楽しいです。
10月11日は花流の日。

2004.10.12 キリコ