拝啓 桜木花道さま


 初めて見たときは、怖くて目を合わせることもできなかった。背が高いからではなく、目を付けられて絡まれたりしたら…と全くの不良扱い。雰囲気だけで思っていてごめんなさい。

 バスケットから逃げだそうとしたり、自分の力不足に怒ったり、そしてよく八つ当たりをしてたよね。それでも努力を重ねて、ものすごいスピードで成長していく姿を覚えています。

 あなたはいつも晴子の前で赤面していましたね。誰の目から見てもわかるのに、当事者はとても鈍く、正直可哀相…と思ってました。けれど、それでも協力する気にならなかったのは、女の直感、かな。本当に見つめていた相手は、晴子じゃなかったでしょ?


「どうぞよろしくお願いします」

 名刺を渡して、すぐ近くに腰掛ける。そばで見るとやっぱり大きい彼ら。同じチームでコンビプレーが有名な元同級生のインタビューを、やっと担当することができた。
 大きな声でお世辞らしいことをいう桜木くん。そして、黙ったままの彼のライバル。
 コンビというべきかな。それともパートナー?
 そこは聞かないし、記事にも絶対にしないけど。

「…あんた…湘北だよな」
「………」
「あん? えっ?」

 驚きで何も言えない私の代わりに、桜木くんがよくわからない単語を繰り返す。
 隣の彼と私の顔をグルグルと見比べ、どちらも黙ったままのことにしびれを切らした。

「…湘北? 同級生とか?」

 あなたの言葉は、親しみがあった分よけいに私の胸にグサリと刺さった。

「あ! ハルコさんの友達!」

 ずっとその認識のままでいたのかと、笑うしかできなかった。
 ずっと一方的に見ていただけだから、別にいいのだけど。
 けれどまさか、一言も話したこともない流川くんが覚えていてくれてるとは思わなかった。もしかして、自分の周りではなく、桜木くんの周囲にいた女の子の方を覚えているのかな。

 短いけれど和やかなインタビューが終わり、仕事の顔を取って素直な私で2人に向かう。

「これまでずっと応援してました。これからも頑張ってください」

 15歳の私は15歳だったあなたに本当に感動した。恋心ではないけれど、憧れと尊敬の気持ちでずっと見続けて、こんな仕事にまでついてしまった。
 たったこれだけを伝えるのに、10年近くかかった。
 2人のバスケットを、そして2人の仲を、ずっと応援しています。
 これは、本当の気持ち。

 

誰だかわかっていただけますでしょうか。
ずーっと前から考えてた話だす。

2005.1.4 キリコ