特製布団


 重い。
 そう口にしようと思っても、思うように胸郭が動かない。一度寝たら滅多なことでは起きない自分が、最近たびたび目覚めてしまう。真夜中に。
 重いから、である。
 じゃあ泊まりに来なければいいのに、と毎回思う。そんな自分はなぜかまた来ていたりするのだ。
 重いのに。

 花道の体重を、流川はなんとなくしか知らない。自分より10kg近く重かったはず。
 それが、冬になってから、ずっと掛け布団なのだ。
 一種の拷問だ、とさえ思う。
 流川は体をよじり、そこから逃れる。背中を向けてため息をついていると、何かに吸い寄せられでもするのか、花道は流川の背中に張り付いてくるのだ。
 湯たんぽ。
 この状態は、とりあえず嫌いではない。

 

 花道は、15歳で人肌を知った。
 お風呂上がりのすべらかな肌が気に入っている。汗をかいたあとぺっとりくっついてくる。その状態も花道は頬ずりしたいくらい好きだった。
 その肌の匂いを覚えてしまった気がする。
 花道にとって、極上のシーツだった。
 相手があのキツネだとわかっていても。
 だから、つい頬を寄せてしまう。
 真夜中に、流川の動きで少し目覚める。離れられたことに気づき、ほとんど無意識にその肌を追う。くっついたところが、背中だともなんとなくわかる。
 とにかく、一晩中、ずっと張り付いていたいのだ。

 


 

重たくてもいいんじゃないでしょうかねぇ(笑)

2005.4.11 キリコ