A Place in the Sun

 

「テメーの体は黒人みてーだ」
 流川が花道のペニスをじっと見つめながら、しみじみとした声で言った。

 花道の21歳の誕生日だった。その年の花道の誕生日はオフだったので、日付が変わるところからずっと二人で過ごした。朝の明るい部屋の中で、流川がフェラチオをしているところだった。
「………なんだって?」
 一瞬理解できなくて、花道は混乱した。
 流川は花道のそれをギュッと握ってから、説明し出した。
「腰が高い、足もまっすぐで長い。体型が日本人じゃねぇ」
「……体型?」
「…赤い髪の日本人もいねぇ」
 流川はまだ昨夜のお酒が抜けていないのだろうか。今朝はよく話した。
 花道は、流川が真剣な顔をしたままペニスのことを言っているのかと思ったのだ。
「えと……それで?」
「……別に」
 自分よりスポーツ選手として良い体格を持つ花道は、なんとなく不愉快だった。不機嫌な表情のまま、流川はフェラチオを再開した。
 流川の口も手も器用に動く。いつもなら、花道は長い時間こらえることができなかった。
 自分の下半身で動く黒い髪を、花道はじっと見つめた。
「テメー……集中しろ」
「……へ?」
「なに考えてやがる…」
 押さえ込んだつもりの嫉妬心が吹き出すと、花道の勃起も甘くなるらしい。
 流川がどれ程経験してきたのかと想像すると、心穏やかではいられなかった。
「べ、別に…なんもねーよ…ちょっと歯が当たったンだ」
「……どあほう…」
 自分のせいにされて、流川はイラッとした。
 流川にも、花道の想像がわかっている。その点に関しては申し訳ない気持ちが少し浮かんだ。
 大きなため息をついてから、流川は少し顔を上げた。
「オレは、最初っからうまい」
「……はい?」
「経験値が高いせいじゃねー」
 流川のフォローらしき言葉が、全く逆方向に感じ、花道はますます萎えそうになった。
「て、テメー……最初はオレの、噛みまくってたじゃねぇか」
「……あンときは、テメーが暴れるからだ」
 プイッと顔を横に向けられて、花道も上半身を起こした。
「そ、そんな…オレは暴れなかった」
「……ウルセー、どあほう」
 怒ったような声を出しながら、流川はまた花道を口に含んだ。
 花道は「ウッ」と呻きながら、流川を見下ろした。この綺麗な顔が自分の下半身に張り付いている。これはとても興奮する光景だった。
 舌でゆっくりと花道を舐めながら、流川は花道を見上げた。その視線に、花道はドキッとした。
「オレは……オレならこーして欲しいな…ってコトをしてるだけ」
「……どーいうこと?」
「…男同士なんだから、わかりやすいはず」
「……それって…オレがわかってねーって言いたいわけ?」
 その問いに、流川は答えなかった。
 流川の本格的な攻めに、花道はいつも通り長く耐えることができなかった。

 攻守交代だ、と花道は勢い良く流川を押し倒した。
 半勃ちの流川に手を添えて、じっと顔を見上げる。流川は余裕の表情で、先ほどの花道のように上半身を起こした。ゆっくりと赤い髪に指を絡めて、じっと見下ろしていた。
 そういえば、アメリカに来て初めてこうしたとき以来、流川はいつもこんな感じだった。前立腺を刺激したときのような乱れがない。
「ちゃんとイッてるだろ」
 花道の考えを見透かしたように、流川はポツリと呟いた。
 これまでも頑張ってきたつもりだけれど、まだまだ努力が足りなかったかもしれない。花道は、熱心に流川に触れた。
「ン…」
 この声だ、と思う。これは出るのだ。けれど、「あん」とか「イイ」とか、ないものだろうか。
 花道が少し攻めるところをずらすと、流川の腰が引けた。
「それイイ」
 顔を上げると、目を閉じた流川がポツリと呟いた。確かに、これまでより気持ち良さそうな顔をしている。
 これまで流川の悦いポイントというものを探ってこなかったことを反省した。
「こ…これは…?」
「…うん…」
 この返事はきっとたいしたことがないという意味だろう。
 花道は、流川のあちこちに触れて、流川の様子を探った。
 フェラチオをしながら、指をひたすら動かし続ける。こんなにもいろいろ出来ることがあったのに。
「くっ」
 短い喘ぎ声とともに、流川が射精した。呼吸はとても荒くて、いつもより表情に余裕がない。ギュッと目を閉じて、眉が寄っている。ほんの少し唇が開いていて、花道の肩を掴む指を強く感じた。
 流川がベッドに倒れこんでも、まだ胸が上下したままだ。フェラチオだけでこんなにも気持ち良さそうにしている流川を初めて見た。
 花道は、自分がまた力を持ち始めたことを感じた。
 口の中も強い快感をもたらしてくれる。セックスの一つだとは思うけれど、セックスそのものではないと花道は思う。男同士の場合、やはり「アソコ」を使うのか。本当にこんなところに入るのか。花道は具体的に想像しながら、流川の膝に手を置いた。
 あと2ヶ月ほどで、流川は卒業してしまう。
 花道は、天井を見上げた。
 

あとがき

2014. 6. 25 キリコ

  
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