無 題 

 

                             
 たくさんカレーを食べて、シャワーを浴びてベッドへ向かった。
 流川の背中を見ながら、これが落ち込んでいる流川なのだろうかと考えた。
 1人で消化しようとするタイプだと思っていたけれど、わざわざ花道に会いに来た。
 けれど、特に何をして欲しいというわけでもなさそうに見えた。
「じゃあ…いつも通りでいいンかな」
 そういいながらも、花道もまだからかったりする気にはなれなかった。
 先週とは逆で、花道は流川の背中に張り付くように横になった。
 狭いけれど体の位置が落ち着いたとき、流川がホッとしたようなため息をついた。
 花道にはわかる。ほんの少し浮上した呼吸だ。
「ルカワ…泣いてンのか?」
「……ふざけんな」
 声に張りはないけれど、少し元気になったようだ。
 花道は流川の顎を掴み、勢いよく上に向けた。
 驚いたような声が出る前に、花道は覆いかぶさってキスをした。
「おやすみルカワ」
 花道は肘をついて流川を見降ろした。
 一瞬触れただけのキスに、流川はものすごく驚いていた。
 ゆっくりと流川の腹部に腕を回して、密着するように倒れこんだ。
 流川のうなじに額を寄せて、花道は目を閉じた。
 流川の匂いがするな、と思った瞬間、体が反応した。
 グッと流川の臀部に押し付けるようになり、花道は慌てて体をずらした。
 流川が首を動かして花道を見ようとする。
 暗くて良かったと花道は笑った。
「す、すまねぇ…けど、今はそんなんじゃねーから」
 流川に伝わっていないことがわかり、花道は一度咳ばらいをした。
「落ち込んでるオメーにそんな…」
 花道は今はしたいとは思っていない。けれど、体は反応してしまった。ただそれだけなのだ、と説明したい。
 それどころか、流川は花道と離れたがっていたのだ。
 あれは別れようと言っていたのも同然ではないだろうか。
「あ、そうだ。そうだった」
 花道は小さな独り言を言った。
 別に言い訳などしなくても、もう流川はする気はないのだろう。
 そんなことを頭の中で考えていると、体もどんどん落ち着いていった。
 花道が目を閉じたとき、腕の中の流川が突然動いた。体を回転させて、花道と至近距離で顔を合わせた。
「テメー…いま何考えた…」
 クスッと笑いながら、流川が力が半分は抜けた花道自身に触れた。
「なにって…」
 流川は花道の返事を待たずに、そのまま花道の肩を押した。
 ほんの少し押し倒されただけで、花道自身がまた元気を取り戻す。流川の指は軽く当てられているだけなのに。
「だ、ダメだルカワ…ムリすんな」
 その言葉を止めるように、流川の唇が花道の口を塞いだ。
 軽く触れただけで、そのまま流川は下に降りていく。
 花道は、戸惑いと期待で気持ちが揺れた。
 久しぶりのフェラチオに、花道は長くもたなかった。

 次の日の朝早く、花道は目覚めた。
 狭いベッドでは寝心地が良いとはいえない。
 おそらく同じような理由で、流川もすぐに起きたようだ。
 二人で向かい合って朝食を食べても、何も会話はなかった。
 花道は流川の口の動きをじっと見つめていた。
 ぼんやりとしているように見えても、口はしっかり物を噛んでいる。
 昨夜は、あの口の中に出したのだ。
 思い出して、花道の頬は熱くなった。
 あの後、すぐに洗面所にいったので、おそらく吐き出したのだろうと思う。
「そーじゃなかったら……」
 飲み込んだりしたのだろうか。
 花道は、朝食中ということもあり、それ以上想像するのを止めた。
 改めて考えてみても、よくわからない関係だ。
 流川がいつ帰るつもりなのか、それすら知らなかった。
「ルカワ」
 小さめの声で呼びかけると、流川が花道をまっすぐに見つめた。
「バスケ、いこーぜ」
 ほんの少し目を見開いて、流川は黙ったまま頷いた。
 とりあえず、バスケットをしたい。そういう気持ちは間違いなく同じだと花道は思った。
 
 

 

2019 .5 31 キリコ
  
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続きがいつになるかちょっとわからないのですが(汗)
6月中には…