Fox&Monkey
ボタンを外す手が震えていることに気づき、花道の頬はいっそう紅潮した。顔を肩に埋めたままの流川に見られていないことで、花道は逃げ出さずに済んだ。
まるで初めて一人で服を脱ぎ着する幼児のように、もの凄く長い時間をかけて花道は流川のシャツの前をはだけた。
右手を差し込んで、シャツを肩から抜こうとする。何気ない当然の動きに、腕の中の肩がピクリと反応し、花道の方が驚いて手を引っ込めた。
「…ルカワ?」
目を向けても、相手の耳あたりしか見えない。返事もなく、嫌がる素振りでもなく、花道はまた濡れたシャツに手をかける。
首から肩へ大きな手をはわすと、先ほどと同じように肩が震える。自分の動きがもたらす反応だと気づいて、花道の心拍は上がる一方だった。出来るだけ肌に直接触れないように努力した結果、相手をくすぐることになったらしい。
「る…ルカワ、腕、抜くぞ」
自分の行為をわざわざ口に出してみなければ、違った意味を持ってしまうようで、花道はいちいち報告した。
左肩が現れても、流川は顔を上げず、規則正しい呼吸から眠っているかと花道は思った。壁や床に寝かせる方が脱がしやすいとわかっていても、花道は左手で流川を抱いたままだった。
意外とすべらかな肌は夏の日焼けもひいて白く、暗闇でもわかるくらい光っている。
花道は両目をギュッとつぶり、自分のおかしな考えを追い出そうとした。けれど、酔っているためか、それともそんな欲望を元々持っていたのか、花道は進むことも止めることも出来ずにいた。
「…ん…」
短い高い声が耳元に聞こえ、花道は心臓が止まりそうになった。
花道の右手は、いつの間にか流川の脇に差し込まれていた。
ほんの少し動かすと、小さな突起に触れてしまい、また相手の肩が上がる。花道の心拍も上がる。何の隆起もない胸なのに、ゆるく揉む動きをすると、耳元で声が漏れる。
心の中で叫びながら、脳の理性の司令部からはストップがかかる。けれど、男の本能は雪山の雪崩のように、どんどん大きくなるだけで止めることも出来なかった。
花道は、目の前にあった白い首筋に噛みつくように口づけた。覆い被さられる重みを、流川も本能で押しのけようとする。けれど、いつもの力も出せず、慣れない感覚に翻弄されるように流されてしまっていた。
生理的嫌悪を感じなかったのは、その腕が馴染みのある暖かさと匂いを持っていたからかもしれない。
半分眠りながらも、肌がチクリとする度に、相手にもやり返していた。その度に、素直な低い声が聞こえる。聞き覚えのある声の聞いたことのない声音は、流川の記憶に入っていった。
耳元で荒い息が聞こえたり、自分の苦しげな声だけが耳に響いたり、何が起こっているのか流川には認識出来なかった。けれど、畳にこすれる自分の手や、衣擦れの音、チャックの音は耳に入っていた。
花道の方は、酔いがあっても自分が何をしているか、わかってはいた。
翌朝、のどの渇きと嘔吐感を覚えて、流川が先に目覚めた。