負けず嫌い ―球技大会―
球技大会というのが、体育祭とどう違うのか、俺にはよくわからない。まぁ確かに種目は少ないし、借り物競走とか、そういうのはねーし。球技大会ってからには、球技で勝負するのだろう。
俺達、いや俺にとって球技はバスケットだ。それなのに、バスケ部員はバスケに出ちゃならねーってどういうことだ。結局、ソフトボールよりはたぶん身長もあるってことなんだろう、勝手にバレーボールに決められてしまっていた。夏まではいなかくても、6月は暑い。今日は雨じゃねぇが、ムシムシする。まぁ授業よりはマシか。
クラス対抗リーグ戦だから、何度も試合する。各学年毎に当たる。
いつかは当たるんだろうとは思ったが、お昼前の腹の減った時間に、うるさいアイツのいるクラスと試合することになった。
ここまで全勝してきた俺のクラスは、何となく負けらんねーと意気込んできていた。「流川くんがいるから」と、頼られているらしいが、俺以外の5人も頑張ってんじゃねーかと感心する。俺だって、バレーボールは体育以外そんなにやってねーんだし。
それにしても、これまでの対戦相手と違い、同じくらい(本当は俺より高いらしいが)の身長の奴が、ネットの向こう側にいるだけで、ずいぶんな威圧感だ。試合前から、アイツはこう宣言した。
「ルカワっ! てめーのクラスにだけは負けねー! 覚悟してろ!」
そんなこと言っていいのか、オイ。負けたら恥かくだけだぞ。俺は、ため息をついて、全く無視した。こちとら、先週のアレからまだ完全復活じゃねぇんだどあほう。試合中、アイツも俺も前衛のとき、アイツはやたらと話しかけてきた。試合中はよそ見するんじゃねぇとバスケんときも言ったはずだ。本当にどんなときでもギャアギャアとうるさい奴だ。
しかし、桜木は、上手かった。ときどき、そのバカ力で、ボールを飛ばしすぎることもあるが、確かに出来る。悔しいが、あのジャンプ力はスゴイと思う。俺がブロックしても止められねーなら、他の奴でもムリだろう。気持ちのいいくらい、アイツは飛ぶ。そして、桜木がチームを引っ張っているのは、誰の目にも明らかだった。
ヤバイ、と思ったときには、向こうサーブで、結局高い打点のアタックでやられた。反応が鈍かったチームメイトが、俺に向かって謝る。俺は、「リーグ戦だ」とだけ言って、ネットの向こうを睨み付けた。
負けるのは、好きじゃねー。まして、相手が桜木なら尚更だ。
「見たかっルカワっ! 俺の勝ちだ!」
ネットのそばまで来て、嬉しそうな顔で言う。バスケでは全く勝てないからって、他のことで喜ぶんじゃねーどあほう。
「…てめーのせいだ」
「ぬ? 負けは負けと潔く認めたまえ、君」
そう言ってカカカと笑う。俺はその笑顔にイライラする。
「……もう絶対ヤんねーからな」
俺は低い声で呟いて、桜木に背中を向けた。
「……えっ…? そ、それって…おい、ルカワ?!」
ネットにしがみついて、慌てるアイツがおかしかった。結局、すべてのバレーボールチームの中で、俺のクラスが一番だった。気分いー。2位の桜木のクラスが、なぜ午後から調子が出なかったのか、俺は知らんぷりすることにした。
それにしても、桜木という男が、どのチームでも中心でムードメーカーだということが、よくわかった。
桜木は、また俺と、ヤリてーらしい。
勝つためなら手段を選ばないアナタが好き…(笑)
2000.11.13 キリコ