朝ご飯
でっかい背中をぼんやりと見つめる。
寒い中ランニングしてきたらしく、Tシャツにエプロンで台所に立っていた。
自分と、まだふとんから出ようとしない俺の分の朝ご飯。
そのための動きを見るのは何度目だろうか。
包丁や皿を置く音、鍋が火を噴く音、音程の外れたおかしな鼻歌。
最近の俺は、こんな目覚め方をする。その背中は、いつも元気そうだ。俺のために朝飯を作るのも楽しいらしい。変な奴だ。
大嫌い、と言ったじゃねぇか。
だけど、好きだと言った。恋人なのだ、と。
…恋人だから、朝がこんなに甘く感じるのか。部活中やガクラン姿には何も思わないその広い背中が、朝だけはなんとなく好きだ。
きっと目覚めたばかりの俺は、寝ぼけているに違いない。
たまには、呆けた振りして、俺からしてやろう。そう思ってしまうくらい、俺は桜木との朝が気に入っている。