繋がり
一度繋がってしまったものは、ずっとそうしなければならないのだろうか。
うーん、そんな気もしてきた。
もうデキねー相手かも、と思う方が先だった。フラれた、と思うよりも。
なぜだろうか。
俺はスキだと言って、ルカワが何も言わなくて、あ、幻聴のような「スキだ」はあったけど、あれは聞き間違いじゃなかったんだろうか。事実を知りたくなくて、確かめられなかった。けれど、たぶん言葉よりも、こうして抱きしめ合う方が、俺達にはより真実に近い、と思う。ルカワは抵抗もしなければ、ビックリするくらい積極的だった。俺が戸惑うくらいに。
考えたわけじゃなかったけれど、計算すると約1年ぶりのルカワの体。俺は、相当舞い上がっていた。ルカワよりはマシだけど。
あんまり何も話さなくても、どっちがどうやって、どこをどうして、って流れは、全く忘れてない。どうするのが一番良くて、今はどうしてほしいのか、俺にはわかる…わかってると思う。こういうのは、もしかしたら細胞が記憶することで、脳で覚えておく必要はないのかもしれない。自然と反応する体に、俺は素直に従った。
コワイと思ったのはルカワの方で、まるで知らないヤツとやってるかのように、別人だった。変なテクを披露したとか、そういうんじゃなくて、すんげーやる気満々、って感じ。そんでもって、俺はというと、そんなルカワの姿態にギンギンだったりする。なんか、サカッてるみてーで恥ずかしいけど。
「オメー…なんか変じゃねぇ…?」
オレを掴んで俯く後頭部に小さく尋ねる。
「…何がだ?」
くわえ込んだルカワが、目線だけで俺を見る。その挑むような瞳に、俺はしんぼう出来なくなる。
今日はベッドの音も気にしない。アメリカンサイズなのかと思ったが、以外とシンプルなシングルベッド、相部屋のヤツがいるはずだが、今はいないらしい。ずっとルカワと一緒にいるのかと思うと、ムカついて、妙に落ち着かなくなった。
「オメー、ルームメイトとうまくやってんのか?」
動きをゆっくりにして上から顔をのぞき込む。汗だくの顔に、真っ黒い髪が張り付いて、額よりも頬になぜだかうっとりする。全部後ろになでつけると、印象的な目が露わになった。
「? なんだこんな時に?」
「いいから。いるんだろ?」
「…いるぜ。…だから?」
「……仲良くやってんのか?」
息は切らしたままのルカワだけど、俺が動かないから態度は余裕かましてて、自分の手でまた髪をかき上げた。けれど、俺がすでにオールバックにした後だけど。じっと、俺の目を見つめたまま、フンと小さく笑いやがった。
「てめー…妬いてやがるな?」
ソコをギューーッと締め付けやがり、俺は情けない声を出してしまう。まるでその通りと認めたかのタイミング。でもやっぱりその通りだった。気になって、仕方ない。
いきなり俺の胸を押し、ルカワが繋がったまま上体を起こした。日本にいたときは、あまりこの体勢は好まなかったはずだけど、今日初めていろんなコトやったし、もう驚かない。
俺が嫉妬してると肯定する前に、上機嫌のルカワが一人で動く。俺は何度目かわからないのに、またちゃんとイク。ルカワのも手伝う。もう、ドロドロだった。
「…ヤリ溜めって…できねーのかな…」
以前にも思ったこと。ま、男の構造上、ムリだろうけど。
体だけが目当てじゃない。けれど、やっぱり知ってしまったら、ナシではいられないのかもしれない。
「寝るぞ」
荒い息のまま俺の隣に倒れ込んだルカワが、顔も上げずに言う。俺だってさすがに疲れ果てた。まだ時差ボケが残ってる感じ。
「そんで、またヤる」
「はぁ?」
俺は目を見開いた。
「…ヤリ溜めるんだろ?」
枕から片目だけを見せながら、とんでもないことを言う。ちゃんと聞こえてたのか。そして、以前とは返事が違うことにもなんだか嬉しかった。
「だから、寝ろ」
「おっ…おう…」
ルカワの規則正しい寝息を聞いても、こんなに疲労していても、俺は眠れなかった。もらったゴムは後2つ。ずいぶんたくさん持ってきたよな、とおかしかった。それにしても、どこから持って来たんだろうか。それを考え出すと、ますます目が冴えてしまった。
2001.9.17 キリコ