カリフォルニア滞在記
人生ビックリなくらいラッキーだったと思う。運なぞに自分が頼るとは思ってもみなかったが、ちょっと神頼み的なところもあったのは事実だ。カリフォルニアのこの有名な大学に進学するのがいかに難しいか、聞いていたから。
スポーツ全般で有名な大学だけあって、施設は相当たるもので、俺は入学早々かなり浮かれた。自分では。また知らない面々の中に入ったけれど、大学と高校は違っていて、どちらにしろみんなバラバラという感じ。あまり人には関知しないところが、俺には合っているらしい。けれど、試験のときだけは正直困ったりもした。
総じて大学生活は楽しいと言える。というのはバスケットの名門校でもあり、施設が整っていて、かなり夜遅くまで毎日使えるし、とにかく俺はのんびり構える暇がないのである。やはり、上を目指せるのは、苦しくても嬉しい。
シカゴとは全く違った気候のこの土地は、過ごしやすいのもあった。日差しはきついけれど、たいてい晴れで、街中も陽気だ。雪も降らないから、外コートが使えないということもない。まさに、天国。そんな俺の生活の中で変わらないのは、ほぼ定期的に届くハガキだった。いつまで経っても一行書きで、ハガキ代が勿体ない気がする。そう思うのに、ドミトリーの受付に必ず確認してしまう。もう習慣になったのだ、と自分に言い聞かせた。
「流川くん、ハガキ? 日本から?」
「…そー」
ここには日本人が割といる。尤も、俺のようにスポーツで入学してくるのはあまりいないので、日頃は会わないけれど、この寮にはたくさんいるはずだ。女も男も。
女というのはなぜ他人のものが気になるのか、俺が見ていたハガキをのぞき込もうとする。それは礼儀正しくない気もするが、それを言うのもメンドウでただハガキをかばんに終う。ギルと違って、日本人は日本語が読めるのだから。
「あ、今晩みんなで映画に行こうって言ってるんだけど、流川くんも行かない?」
「行かねー」
自主練するから、と心の中で答える。桜木ならば、こんな言い方はしないのだろう。
この考え方は、自分的にはかなり不本意なのだが、ただでさえ桜木の定期便が届いた日である。バスケットに関わることならともかく、他人には目が行かなかった。…チクショウ…
俺の生活がこんな感じのまま1年くらい続いた夏、桜木がまたアメリカに来ると言ってきた。いつもより長いハガキをよく読んでみると、そういうことらしい。―夏休みはテメーをぎゃふんと言わせてやる。寮に泊めろ。
いつもの2倍ぐらいの長さ(というのは大げさだけど)の文面を、俺は何度も見返した。もちろんまず驚いたけれど、それ以上にこみ上がってきた感情についてはあまり認めたくないかもしれない。
「またホテルも予約しねーで来るつもりか、どあほう」
今度もまた違うルームメイトがいるのだ。そう簡単に他人を泊められると思うなよ。
それにしても、約1年半ぶりに会うのだ。そんな計算をすぐにした自分にビックリした。―梅干しと海苔
冗談でそんな返事を書いた。
続 き
2002. 7. 4 キリコ