Fox&Monkey
花道は、眠たがる流川を引きずった。そして、もの凄く時間をかけて、花道の家に戻ってきた。
見慣れた部屋についた途端、流川は丸くなってまた寝ようとする。寒かったが、ふとんを出すのも億劫だった。
「ルカワ?」
「……ん…」
ちゃんと答えたつもりの流川だが、実際には言葉にもならなかった。強引に起こされ、連れ帰られたことを、流川は怒る余裕もなかった。どこででも眠れるが、やはり慣れた方がいい。目を閉じていても空間がわかる部屋は落ち着いた。ビデオを見たときよりも、花道の心拍はずっと上がっていた。石油ストーブの前に座り、後ろで横たわる気配をずっと気にしている。新年早々外泊した咎で、流川はしばらく外泊禁止令が出ていた。それを無視しようとする流川を止めたのは、花道だった。そのときは自分が言った意味がよくわからなかったが、今日それがわかった気がした。
逸る気持ちを抑え、花道はふとんを敷く。コートを着たままの流川を、そのままその中に押し込めた。
ぐっすりと深い寝息を立てる流川は、花道には珍しいものではない。その横に滑り込むことも、初めてではない。けれど、考えてから行動するのは、これが最初だったのかもしれない。
花道は、流川を抱くつもりだった。流川の体が温まるまで、花道は服の上から触れた。焦っていても、気遣いは忘れない。意外と冷静な自分を、花道は鼻で嗤った。
唇にも頬にも吻付けるけれど、流川はほとんど反応しない。ただ寒さのせいか、両腕の花道の背中に回していた。首筋に、冷たい鼻を埋めた。
花道は、こうして暖め合うだけでこんなにも穏やかな気持ちになれるのが、不思議だった。そして同時に、さっきのビデオよりも興奮している自分も認めていた。
ありとあらゆるところに触れて、花道は徐々に流川の衣服を剥いだ。花道は、アルコールの入った流川が妙にしどけないのを知っている。けれど、今日はそれにもまして、反応も素直だった。それが、花道を一層舞い上がらせた。
「ルカワ…」
耳元で呼んでも、流川は肩をすくめるだけで目を開けない。時折花道のトレーナーに爪を立てるのが、半分起きている証拠だった。
流川はそれでもトロトロとした寝起きの心地よさの中にいた。花道の部屋にいて、花道がいつものように触れているのはわかるけれど、いつものように仕返しが出来ないでいた。ケンカ腰の触れ合いも自分たちらしいと思うが、ただ穏やかに触れられることも、流川は嫌ってはいない。だから、花道のされるがままだった。
以前体験した強烈な快感が始まり、流川はきつく目を閉じた。声が出そうになるのを手で押さえ、小さく瞬きした。
見なくても何をされているかわかる。けれど、大きく盛り上がったふとんが、流川の貧困な想像力を膨らました。とてもまともに見ていられない、と流川は顎を天井に向けた。
目覚めてくると、負けるものかと思う。イクときも、流川は一言も発しなかった。
寒くて冷たかった自分の体から、うっすらと湯気が立つのを感じ、流川はまた丸くなろうとした。花道のへの仕返しは朝だ、と心に決める。
けれど、流川は眠れなくなった。
「…ってー」
押さえていた口から、ガマンできない声が出た。それくらい、痛かったのである。
流川が涙目でふとんの山を見ると、花道の顔があった。覆い被さられるのは慣れっこだが、その肩に自分の足があり、確認のために瞬きした。
今更のようだが、アルコールでガンガンいい始めた頭を抱え、流川は自分の下腹部まで痛くなった理由を必死で考えた。全く動かない花道も、変に思える。
流川は乾いた口の中で、苦労して唾を飲み込んだ。
「何してんだ…」
痛そうに顔をゆがめるけれど、流川は怒ってはいないようだ。花道はそれに少し勇気を得た。
「……セックス」
「…あんだそりゃ…」
流川はただ驚いた。