Fox&Monkey
県大会が始まると、花道と流川はキャプテンと副キャプテンの顔になることが多かった。その真剣さは、彼らが最高学年であることから来るのかもしれない。こうなってみて、一昨年の赤木たち、昨年の宮城たちの気持ちがよくわかった。花道は新入部員をよく観察し、スタメンの相談や細々とした打ち合わせを、部員の前でする。二人の会話は聞こえなくても、周囲は緊張する。流川は自分の怪我を繰り返さないために、自転車通学を止めた。
そして、それらの無言の意気込みは、チームメイトに伝染していった。彼らの毎日はバスケット中心となった。授業が終わると部活に急ぎ、体育館での居残りも欠かさない。休みの日に体育館申請を出し、それ以外の日は街のコートに向かう。二人きりのときもあれば、後輩たちがいることもある。スタメンが呼吸を合わせる練習にもなった。
後輩たちは休憩中、花道と流川のことを話すことがある。彼らに憧れて入部してきた部員も多いのである。一緒にボールを追ったり、奪い合えるだけで、最初は舞い上がったりもした。
「やっぱ3年もやってると、ああなるのかなァ」
「…ああって?」
「俺、自分でもかなり巧いと思ってたけど、流川先輩についていけねーもん。けどさ、キャプテンは食らい付いてるって感じじゃん」
同じ新入部員は黙って肯く。表現はいろいろだが、とにかく彼らのコンビプレイを止めることができるチームメイトは、他の3年生でもいなかった。
それがまた、彼らへの憧れを強くするのだ。後輩たちが考えるその呼吸は、ずっとコートで一緒であれば合うというものでもないらしい。好き嫌いは別にして、合う合わないは出てくるのが普通である。相手の動きに合わせず、自分本位なプレーは、チームメイトに嫌がられる元だ。もっと何年もしていれば、また話は別かもしれない。
花道と流川のコンビプレイが人を感心させるものとなったのは、彼らが常に互いを見て、互いがそれぞれの最高のプレーをしていたことに始まる。流川に追いつこうと花道は必死だったし、流川は追いつかれまいと努力を続けた。それが、知らず知らずのうちにそれぞれの能力を高めていった。
ずっと見ていたから、互いの動きがわかるのかもしれない。
それだけではなく、彼らが他のところでも呼吸を合わせようと努力していたせいもあるかもしれない。
常に高め合い、競い合い、互いを大事にする二人だから。
練習がハードでも、二人の夜はこれまでとあまり変わらなかった。試合直前にはどちらからともなく押さえただろう。だが、彼らはまだ蜜月なのだから。
花道は、流川と一緒にイケないことが物足りないと思っていた。彼が考えるところのSEXとは違うのである。難しいらしいのは知識として得ていたが、実践はまだまだ初心者の彼らだったため、収得まではいかない。けれど、どちらも、特に花道は努力を怠らなかった。
必ず流川に奉仕してから、花道は自身を流川に進める。それは、せめてとの思いもあるし、その方が体の力が抜けているからだ。途中まではやり合いなのに、後半は花道のペースだ。その手順に、流川は文句をつけたことはない。花道が無茶をしないのは、肌で感じていたから。
最近の花道は、その律動を変えた。そんな変化は流川にもわかる。そして、それがもたらす効果については、少し文句を付け加えたいところだった。深く沈んだまま、花道はそこからほとんど動かないような、小さな振動を伝え続けるのだ。流川の肩を抱いて、花道はその白い顔を見つめたままだ。そんな最中に目と目が合うことにも、流川は慣れていない。
「…てめー、なんでそんな…」
小さな声は、荒い息の中から呟かれた。艶を含んだ文句を何と呼べば良いのか、花道は知らない。けれど、自分を煽っているようにしか聞こえなかった。
「……なんでって…」
優しい動きとは違い、花道の呼吸も荒かった。
流川の頬が赤く染まり、花道の腹には素直な反応が当たってくる。
花道は、自分のその動きに二重丸をつけていた。
「ル、カワ…その、イケそ?」
目を閉じて快感を追う流川は、それでも小さく首を振った。そのことに、花道はガクリと首をし、流川の首筋に顔を埋めた。
「む…どうすりゃいいんだ…」
「………知るか」
そんなところで努力しているとは、思いも寄らないことだったろう。
授業中に眠り、起きている時間は、バスケットと互いのことだけ考えている二人だった。
久しぶりに書くと、ちょっと感覚がちがう…
今回間が空いたため、1話から読み返しましたですよ…
あー 好き勝手やってるなァ…