「桜木…アメリカじゃ、こういうコト、マジメに話してたぞ」
「はぁ? マジかよ…」
 流川は神妙な顔をして、ウソをついた。実際にどうだったかはわからないが、流川には英語で下ネタを話せるほどの話術はなかった。
「だから、恥ずかしがらなくて、いー」
 そうなのだろうか。半泣きになりそうな花道は、流川の声に気持ちが傾いた。
「インポ……じゃねぇよ…」
「…自分ではデキるってこと?」
「そ…なんでてめーはそんなアカラサマなんだ…」
 花道の頬が少し赤くなった。
「別に…元気な男ならふつーのこと」
 全く表情を変えないままの流川に、花道は小さく笑った。
「オメーとこんな話すンのも変な感じだけど……たぶんオメーの言う通り、’シッパイ’ばっかりで…」
「…オンナにタたない? 本番だけ?」
「あ……ああ…」
 流川のあからさまな単語に、花道もだいぶ慣れてきた。
「先輩が言ってた……デカすぎとか…は?」
「そ…それは…わからん…けど…」
 最初に痛がられたり、嫌がられたり、何か男が傷つく言葉があったなら、一種のトラウマになったのかもしれない。流川は意外と物知りな自分に、自分で驚いた。
「じゃー、見せてみろ」
「…はっ?」
 花道が納得する前に、流川はふとんをめくった。慌てる花道の動きをものともせず、流川はスウェットを下着ごと引きずり下ろした。
「ギャーッ! あにすンだ! このバカ!」
 のし掛かられて、花道は動揺する。殴り飛ばせばいいと思うのに、心の端で体の心配をした。
「…ふつー?」
 自分の下半身を見る流川の言葉に、花道はどこかグサッと来た。自分はデカすぎとは思わないけれど、標準以上だと思っていた。
「膨張率…」
「…はっ?」
 流川の単語は突拍子もないものではなかったが、まさか直に触られるとは思わなくて、花道は今日何度目かの叫び声を上げた。
「る、ルカワ! ヤメロ!」
 他人に触れられ慣れていないソコは、相手が男で流川だとわかっていても反応する。そんな自分を花道は罵った。
 それでも、花道は流川の両肩を掴んで、引きはがそうとも引き寄せようともしなかった。
 花道のうめき声を聞いて、流川はその手を止めた。苦しかったからではなく、あっけなく終わってしまったらしい。
「そ…」
「ソーローとか言うなよ! 立ち直れねぇだろ!」
 思わず呟こうとした言葉を花道自身に言われ、流川は口を閉じた。確かに、嬉しくない言葉の上位に上がるだろう。
 自分の下で荒い呼吸を整えている花道を、流川はじっと見下ろした。
 あの花道を、自分がイカせたのだ。
 自分の手のひらが汚れていて、本当なんだなと実感してくる。
 流川が皮膚の下で笑っていたことを、花道は気付かなかった。
「ルカワ…てめー、この、仕返しだ!」
「……はっ?」
 流川は突然体勢を入れ替えられて、間の抜けた返事しかできなかった。
 花道は、先ほど流川にされたことと全く同じことをした。
 ただ、流川は花道と違い、その首に両腕を巻き付けて、花道にしがみつきながらイッた。

 

2008.1.1 キリコ
  
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