彼らはシーズン中も、休日前には部屋に閉じこもるようになった。チームメイトは、一緒にいるとは思っておらず、それぞれが独りで試合を消化しているのだろうと思っていた。
 流川がチームメイトになって数ヶ月経ち、彼らの親密度はグッと上がっていた。練習中や試合中はこれまでとあまり変わらないが、2人だけが知っている関係が、人知れず発展していたのだ。

「桜木…」
「…こ、こんなときに話しかけンな…」
 今、花道は流川の両足を抱え上げ、自分の分身を太股に挟ませていた。これが世に言う「スマタ」なのだと、花道は流川に教わった。知識では知っていたが、実践は初めてだったのだ。
「……てめー、意外と適応力あるな」
 潤んだ目で見上げられて、花道はキョトンとした。
「……それって、ホメてンのか?」
「………まあ……ある意味」
 花道は、勢いで始まった関係に、順応しているらしい。最初はただ一回の間違いで済ませておけばよかったのに、花道も流川も止まらなかった。そして、それはなぜか、ということを考察しようとはしなかった。
 流川がイクとき、必ず花道にしがみつく。自分を呼びながら、背中に爪を立てそうな流川を、花道は見たいと思った。
「お、オレって……それなりに…ウマイ?」
 そんな情けない質問に、流川は冷たい視線を送る。それでも、努力しているらしい花道を心の中では認めていた。ただし、それは対自分の話だ。
「……オンナは…エンギすることもある…らしい」
「演技? え? フリってこと?」
 真に受けてすぐ青くなる花道に、流川は安心させるような言葉を続けた。
「……男はエンギできない」
「あ………そうか…」
 そういう点、ウソがなくてわかりやすい。花道はそう位置づけた。

 そして、花道が流川にフェラチオを仕返したときも、流川は似たようなことを言った。
「……てめー……チャレンジャー…」
 喘いでいるのに、どこか花道を観察する様子が、気に入らなかった。だから、花道は口の中に力を入れた。見上げると、流川の仰け反る姿が見えた。
 言われてみれば、なぜ自分は男にこんなことをしているのだろうか。
「オレにできるのに」
 流川のその一言が、自分に火を付けたのだ。
 こんなところで負けず嫌いを出さなくてもいいのに、と自分で思う。
 けれど、流川をもっと喘がせて、何も言えなくなるくらいにしてやりたい、とも思うのだ。
 口では偉そうに言うくせに、自分の愛撫にちゃんと応える。快感から逃れようとするのか、それとも繋ぎ止められたいのか、流川の手はシーツに絡められる。だから、花道はフェラチオのときは、流川の両手をそれぞれの手のひらで繋ぐ。ギュッと握り返されると、花道の胸は熱くなった。

「ルカワのハジメテって……どんなだった?」
 以前にも聞かれたことだ。けれど、流川が答えなかったのだ。
「……しつこい」
「………で?」
 花道は、流川の躊躇いなど、おかまいなしだった。
 目をワクワクさせて見つめてくる花道に、流川はあらぬ方を向いてため息をついた。
「……気持ちヨカッタ」
「…そうなんか?」
「……スキなら、そうじゃねぇの」
 おお、と歓声を上げた花道を、流川は無視することにした。
 花道は、この流川にこんなセリフを言わせた相手を知りたいと思うようになった。

 

 

2008.1.2 キリコ
  
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