※ご注意くださいませ※
『花流』サイトなうちです。この話もはなるですが、
この話の流川は、花道以外を相手に…が、あるかも…
そういうのがニガテな方はご注意お願いします。
A Place in the Sun
「オレはたぶん……桜木がスキだ」
夕日の中で、流川は花道を見下ろしながらはっきりと告白した。
花道がインターハイでの怪我から復帰したのは、9月だった。そのときはまだ通学が許可されただけで、バスケットはまだ出来なかった。バスケット部に戻ることができたのは、10月に入ってからだった。
まだ夏服だった頃、花道は流川を何度か廊下で見かけた。クラスは違うし、部活がないと接点がない。特別話しかけたいわけでもない。けれど、全日本のことや今の部活のことを聞きたいとは思っていた。ただ、素直に聞ける間柄ではなかったので、結局何もしなかった。
体育も解禁になり、ようやく放課後は体育館へ、という日常を取り戻したとき、花道は少し涙が浮かんできた。自由に動けない自分にかなり苛ついていた。バッシュの音を聞くのが辛くて、まだバスケット部に顔を出せなかったのだ。
どうやって登場してみんなを驚かそうか、と花道は一人部室で考えていた。そろそろ全員集合しているはずだ。ほんの少し時間をずらして、花道は急いで着替えていた。腕組みをしながら真剣に悩んでいるとき、部室のドアが勢い良く開いた。
「……あれ?」
その声に、花道は目線を高く上げた。立っていれば自分と同じ目線だっただろうに、となぜかすぐに考えた。
「ルカワ?」
「…テメー、ここで何やってる」
「な……なにって…オメーこそ遅刻じゃねぇか」
「…オレはちゃんと言ってある」
流川が急いで着替える様子に、花道は同じようなことをすることに笑いそうになった。一秒でも早くボールに触れたいと思う気持ちは同じなのだと素直に思えた。
「それより、なんでテメーがここにいる」
「な、なんでって……戻ってきたからだよ!」
流川が驚いた表情を花道に向けた。
「…戻ってきた?」
「そう!」
「…なんで?」
「な…なんでって…」
花道には流川の問いがわからなかった。どうやら嫌みを言われている様子でもないらしい。自分をじっと見つめたままの流川を、花道はキッと睨み返した。
「ば、バスケがしたいからだよ! もう許可は出たんだ」
「……治ったのか?」
「お…おお…」
意外にも穏やかな声で聞かれて、花道は驚いた。そのまま「おかえり」とか言ったりしないだろうかと、ほんの少し期待した。
「…ふーん…」
流川はクルリと背中を向けて、体育館へ小走りになった。そして、重い扉を開けながら、こう曰った。
「なんか猿が来てる。バスケしたいらしい」
大きな声は珍しくて、花道だけではなく、部員全員が唖然とした。そしてすぐにその内容を理解して、入り口に固まった。
「桜木君!」
「花道!」
様々な呼ばれ方で迎えられ、花道は仕方なく歩き始めた。
「やぁやぁ諸君! 出迎えご苦労!」
せっかくの自分の登場シーンを勝手に演出されたけれど、花道は怒らなかった。むしろ、どうやって行けばいいのか決められなかった自分を連れていってくれたと少し感謝した。