無 題 

 

 
                              

 県大会が始まる頃から、二人の曜日が変わった。試合の後が多くなり、不思議なことに、以前より回数が増えた。
「アイツのペースだけどよ」
 流川の気分次第だ。というよりは、体調次第なのだろうと思う。
 行為中に花道がいろいろ動いても、流川は特に嫌がらない。けれど、正常位だけはすぐに反発があった。
「そんなモンかな…」
 花道はたぶん自分では正常位が好きだろうと思うのに、意外にもバックスタイルが気に入った。
 相手が流川だからかもしれない。
 こんなところで勝ち負けはないけれど、相手が自分より下にいる方が優位な気がした。
「長いこと、乗られっぱなしだったからな」
 自分で声に出して、思わず笑ってしまった。
 それ以外の流れが変わらなかった。
 流川が自分で準備して、花道にフェラチオをして、挿入する。
 花道が射精したら終わり。
 片付けも相変わらず流川がしていた。
「手を出すタイミングねーしよ」
 そう言いながら、それほど自分でしようと思っていたわけではない。
「意外と献身的…」
 その単語が出たとき、花道は思わず立ち止まってしまった。
 流川が花道に尽くしているように見え始めた。
「え、献身的ってそーいうこと?」
 自分で思い浮かべながら、不思議な思いだった。
 もしかして、流川は花道のことが好きなのだろうか。
 そういう気持ちに、花道は初めて思い至った。
「あ、…そう…そーいうこと?」
 流川はホモで、自分のことが好きで、せめて体だけでも、ってことだろうか。
「そんな風にゃ見えねーけどなぁ…」
 流川はフェラチオ以外はしない。抱き着いたり、キスをしたりもしない。それどころか会話もない。もちろんデートもない。そんなことを望んでいるようにも見えない。
 ただ挿入したいだけ。
「…に、見える」
 花道は両腕を組んで首を傾げた。
「もしかして……オレじゃなくても良かったンか?」
 挿入できるなら誰でも良かったのだろうか。
 あの合宿で、たまたま花道が起きてきたから、そうなっただけなのだろうか。

 

 

2018. 11. 29 キリコ
  
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短いところで終わってしまいました。
続きは、1月1日前後にアップしたいと思っています。